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【相談相手で意思決定の質は変わるのか?】経営者が見落としがちな「使い分け」の視点
経営者、また組織の命運を握るシニアマネジャーの皆さんは日々、孤独な決断を迫られているのではないでしょうか。不確実性が増す現代のビジネスシーンにおいて、一つの判断ミスが組織に与える影響は計り知れません。
「結局、最後は自分で決めなければならない」
それは真実ですが、そのプロセスにおいて「誰と対話し、どう情報を整理したか」が、意思決定の質を劇的に変えることもまた事実です。今回は、経営者の相談相手について、内部の右腕(経営参謀)と外部の伴走者(コーチ)という二つの視点から、その使い分けの本質を探っていきます。
このブログを読むとわかること
- 1.経営者は本当に「一人で決めている」のか
- 2.なぜ今、経営者に補佐役が必要なのか:果たすべき役割
- 3.右腕・経営参謀とは
- 4.右腕・経営参謀に出来ること・出来ないこと
- 5.なぜ「相談しているのに」視点が広がらないのか
- 6.もう一つの選択肢:外部の伴走者という存在
- 7.経営参謀とエグゼクティブコーチの比較
- 8.エグゼクティブコーチに出来ること・出来ないこと
- 9.使い分けの視点とコスト比較
- 10.右腕・経営参謀の育成・抜擢の視点
- 11.外部の伴走者(コーチ)の見つけ方
- 12.まとめ:あなたは誰と意思決定をしていますか
筆者プロフィール
砂村 義雄
ステッププラス・コーチング&コンサルティング代表、エグゼクティブコーチ
国内外企業での30年の勤務経験を活かし、経営者・管理職の課題解決・目標達成にコーチングで伴走。中小企業診断士・MBA・国際コーチング連盟(ICF)プロフェッショナルコーチ(PCC)
1.経営者は本当に「一人で決めている」のか
経営者の皆さんは、日々さまざまな意思決定をされています。
そして多くの方が、「最終的には自分が決めている」と感じているのではないでしょうか。
確かにその通りです。最終判断は経営者に委ねられています。しかしここで一度、少しだけ立ち止まって考えてみてください。
本当に「一人で」決めていると言えるでしょうか。
実際には、
- ・手元にある情報
- ・これまでの経験
- ・周囲とのやり取り
こうしたものをもとに判断しているはずです。
つまり意思決定とは、「完全に独立した思考」ではなく、限られた条件の中で形成された
「判断」とも言えます。
そして厄介なのは、この「限られていること」に私たちは無自覚であることです。
だからこそ経営者ほど、自分の「意思決定の前提」を見直す必要があるのではないでしょうか。
2.なぜ今、経営者に補佐役が必要なのか:果たすべき役割
現代の経営環境は、以前とは比較にならないほど複雑になっています。
正解がある問題よりも、「正解のない問い」に向き合う場面が増えているのが実態です。
このような状況において、経営者が一人で全てを担うことには限界があります。
では、補佐役の本質的な役割とは何でしょうか。
それは大きく3つに集約されます。
- ・思考を整理すること
- ・視点を増やすこと
- ・判断の質を高めること
例えば、複雑に絡み合った問題に直面したとき、頭の中だけで整理するのは難しいものです。
誰かとの対話を通じて言語化することで、初めて論点が明確になることがあります。
また、自分では当然だと思っている前提が、実は偏っているということも少なくありません。
補佐役は、その前提に「揺さぶり」をかける存在でもあります。
つまり補佐役とは、単なる「手足」ではなく、意思決定の質を高めるための「思考のパートナー」なのです。
3.右腕・経営参謀とは
経営者の右腕、あるいは「経営参謀」と呼ばれる存在は、企業経営において非常に重要です。
彼らは単なる補助者ではなく、経営の実行を支える中核的な役割を担います。
主な機能を整理すると、次の3つになります。
- ・経営者の意思を具体化する
- ・組織との橋渡しをする
- ・実行を担保する
例えば、経営者が描いた戦略や方向性を、そのまま現場に落とし込むことは容易ではありません。そこには翻訳や調整が必要です。
また、組織は常にさまざまな利害や感情が交錯しています。その中で全体最適を図る役割も、右腕が担うことが多いでしょう。
つまり経営者のビジョンや想いを理解し、それを具体的な戦略やオペレーションに落とし込む実行責任者です。彼らは組織の内部事情に精通し、経営者と同じ熱量で事業に向き合う存在とも言えます。
従って優秀な右腕がいることで、経営は格段にスムーズになります。これは多くの経営者が実感しているところではないでしょうか。
4.右腕・経営参謀に出来ること・出来ないこと
では、右腕がいれば全て解決するのでしょうか。内部の参謀は非常に強力ですが、万能ではありません。右腕には明確に「出来ること」と「出来ないこと」が存在します。
(1)出来ること
- ・社内リソースの把握と最適な配分
- ・経営者の意図を汲み取った、社員への橋渡し(翻訳作業)
- ・実務レベルでの具体的な問題解決
これらは右腕の真骨頂です。経営者一人では担いきれない領域を支え、組織を前に進めます。
(2)出来ないこと
- ・「忖度」の排除:給与や評価を握られている以上、経営者に対して100%客観的、かつ批判的な意見を言うのは構造的に困難。
- ・抜本的な視点の転換:同じ組織の空気を吸っているため、組織の常識に縛られた発想になりがち。
社内にいる以上、どうしても組織の力学から影響を受けます。また、経営者自身が無意識に「見せたい自分」を演じてしまうことがあります。その結果、「本質的で深い対話が起きにくい構造」が生まれやすい嫌いがあります。
5.なぜ「相談しているのに」視点が広がらないのか
「役員会で議論しているし、右腕とも毎日話している。それなのに、どこか視界が晴れない」
そう感じることはありませんか。
内部の人間は、どうしても「今の組織を維持すること」や「短期的な損得」を前提に考えてしまいます。これを「インサイダー・トラップ」と呼びます。同じ情報源、同じ利害関係の中で話をしても、思考の枠組み(フレーム)はなかなか広がらないのです。
つまり次のような要因が背景にあるからです。
- ・同じ「前提」を共有している
- ・「正解を探す」会話になっている
- ・「役割」という枠組みでの対話となる
例えば、同じ組織にいると、共通の常識や価値観が形成されます。
それ自体は悪いことではありませんが、新しい視点を生みにくくなります。
また、会話が「正解探し」になると、思考は過去の延長線に縛られます。
さらに、経営者と部下という関係性の中では、本音が出にくい場面もあるでしょう。
その結果、「相談しているのに、思考は広がらない」という状態が起きるのです。
6.もう一つの選択肢:外部の伴走者という存在
ここで一つの選択肢として考えられるのが、外部の伴走者です。外部の人間が関わることで、対話の質は大きく変わることがあります。
その理由として考えられるのは次の3つです。
- ・利害関係がない
- ・前提を共有していない
- ・答えを持ち込まない
部外者だからこそ経営者は、通常の枠から離れて、より率直に話すことができます。
また、組織の常識に縛られないため、新しい視点が入りやすくなります。
そして最も重要なのは、コーチは「答えを持ち込まない」存在であるということ。
答えを提示するのではなく、「問いを通じて思考を深める」。それが伴走者の存在価値です。
7.経営参謀とエグゼクティブコーチの比較
ここまでの流れを踏まえると、両者の違いは自然と見えてきます。
大きく整理すると、
- ・経営参謀は「実行と判断の支援」
- ・コーチは「思考と内省の支援」
具体的な項目ごとに比較してみると、
項目: 右腕・経営参謀(内部) / エグゼクティブコーチ(外部)
- ・【視点: 主観的・組織内部 / 客観的・俯瞰的】
- ・関心事: 具体的成果・解決策の実行 / 経営者の思考プロセス・自己認識
- ・利害関係: あり(強い)/ なし
- ・対話の目的:「何をするか」の決定 / 「どう考えるか」の深化
どちらも経営者にとって必要な存在ですが、役割が異なります。従って、この違いを理解することで、より適切な使い分けが可能になります。
8.エグゼクティブコーチに出来ること・出来ないこと
一方、エグゼクティブコーチにも同様に「出来ること」と「出来ないこと」があります。
(1)出来ること
- ・真の鏡になる:誰も言えない「耳の痛い真実」を問いとして投げかける
- ・思考の整理:コーチングの技術を用い、経営者自身の中に眠る答えを引き出す
- ・メンタルモデルの変容:意思決定を阻害している「思い込み」を外す
(2)出来ないこと
- ・指示・命令:「こうすべきだ」という答えは出さない。決めるのはあくまで経営者
- ・実務の代行:現場に入って作業をすることはない
つまりエグゼクティブコーチは、経営者の「思考に伴走する」、すなわち、
視野を広げ、思考の言語化を促すことで、経営者自らの判断基準を明確にしてもらうことが役割なのです。
「迷っている心の奥底で何が起きているのか」
「決める自分は何を重視したいのか」
このような問いを立てることでコーチは、経営者が自分自身の答えにたどり着くプロセスを支援します。
9.使い分けの視点とコスト比較
「どちらか一方がいれば良い」というわけではありません。重要なのは「使い分け」です。
・右腕・参謀が必要なとき
戦略を具体化したい、現場を動かしたい、専門的な知見(財務やITなど)が必要なとき。
・コーチが必要なとき
自身のリーダーシップを見つめ直したい、ビジョンを再定義したい、誰にも言えない葛藤を整理したいとき。
またコストと効果については、活用する時間軸や期間が異なるため、定量的に単純に比較するのは難しいです。一般的には「右腕・参謀」を育成・雇用するには時間を要すことはもちろん、高い給与や社会保険・退職金、そしてその人が退職した際のリスクも伴います。
一方、「エグゼクティブコーチ」は契約ベースであり、必要な期間だけピンポイントで高い専門性を活用できるため、投資対効果は効率的とは言えるでしょう。
10.右腕・経営参謀の育成・抜擢の視点
右腕は外から採用するだけでなく、社内で育てることも可能ですが、その際に重要な視点は以下の3点だと考えられます。
- ・経営者との間に補完性がある:自分が直感型なら、相手は論理型。自分が攻めなら、相手は守り。
- ・お互いに信頼関係を構築できる
- ・権限委譲をする:参謀を育てるには、経営者自身が「任せる勇気」を持つことが重要
つまり、社内で右腕を育てる際は、「自分と同じタイプ」を選ばないこと。また、
相手をイエスマンにさせない、経営者側の「心がけ」が何よりも大切です。なぜなら、
経営者にとって本当に価値があるのは、「耳の痛いことも言ってくれる存在」だからです。
11.外部の伴走者(コーチ)の見つけ方
一方、外部の伴走者を選ぶ際には、いくつかのポイントがあります。例えば、
- ・話を深く聴けるか
- ・適切な問いを投げかけるか
- ・信頼関係を築けるか
重要なのは、答えをくれる人ではなく、「考えを深めてくれる人」であることです。
12.まとめ:あなたは誰と意思決定をしていますか
最後に、皆さんに問いを投げかけたいと思います。
- ・あなたは誰と意思決定をしていますか
- ・決める時のあなたの対話は本音でしょうか
- ・視点は広がっていますか
意思決定の質は、あなたの能力だけで決まるものではありません。「誰と考えるか」によって、大きく変わります。
そして、
- ・内部の右腕は、あなたの「手足」となり、共に戦う戦友です。
- ・外部のコーチは、あなたの「鏡」となり、あなたの視座を高めるパートナーです。
この二つの軸をバランスよく持つことで、初めて経営者の孤独は解消され、組織は力強く前進し始めます。
ぜひ一度、ご自身の意思決定のあり方を振り返ってみませんか?
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