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【経営者の学びとリスキリング】今、何を学ぶべきか?「思考のOS」を更新する方法
経営者、役員、そして組織を牽引するリーダーの皆さん、日々の激務、本当にお疲れ様です。
「経営者は孤独である」とよく言われますが、その孤独の本質の一つに「自らの成長を誰がガイドしてくれるのか」という課題があるのではないでしょうか。かつてのように、一度身につけた成功法則に倣えば組織が安泰だった時代は終わりました。今、経営者に求められているのは、単なる「知識の習得」ではなく、自分自身の根本的な思考回路、つまり「OS(オペレーティング・システム)」のアップデートです。
本ブログでは、多忙を極める皆さんが、どのように学び、どのように自らを更新し続けられるか。その「学びの作法」について、エグゼクティブコーチとしての知見を交えて深く掘り下げていきたいと思います。
このブログを読むとわかること
- 1.なぜ今、経営者にこそ「リスキリング」が必要なのか
- 2.経営者は何を学ぶべきか? 成長を加速させる5つの主要領域
- 3.なぜ経営者に「学び」が必要なのか ― 組織の器はトップで決まる
- 4.単なる「勉強」と「経営の学び」の決定的な違い
- 5.最も困難で重要な学び「アンラーニング(学習棄却)」
- 6.経営者は「何を学べて、何を学べないのか」
- 7.多忙な経営者のための「学びの作法」と習慣術
- 8.現代の教養「リベラルアーツ」が経営判断の質を変える
- 9.【実践】明日から始める「学びのルーティン」
- 10.まとめ ― 学び続ける経営者が、組織の未来を切り拓く
筆者プロフィール
砂村 義雄
ステッププラス・コーチング&コンサルティング代表、エグゼクティブコーチ
国内外企業での30年の勤務経験を活かし、経営者・管理職の課題解決・目標達成にコーチングで伴走。中小企業診断士・MBA・国際コーチング連盟(ICF)プロフェッショナルコーチ(PCC)
1.なぜ今、経営者にこそ「リスキリング」が必要なのか
最近、ニュースやビジネス誌で「リスキリング(学び直し)」という言葉を目にしない日はありません。しかし、これは現場の社員だけの課題だと思っていませんか?実は、最もリスキリングを必要としているのは経営層自身だと感じます。
(1)過去の「成功体験」がリスクになる時代
皆さんが今の地位を築かれたのは、過去に素晴らしい成果を出してこられたからです。しかし、不確実性が高い現代において、その「成功体験」こそが、変化への適応を阻む最大の障壁になることがあります。「昔はこのやり方で上手くいった」という自信が、新しい可能性や機会を否定するバイアスとなってしまう可能性があるのです。
筆者のコーチングクライアントの一人に、構想を描くのが得意で「綺麗な」戦略を描こうとする事業本部長がいました。これまではその高精度シナリオが奏功していたようですが、昨今の予測不能な事態には全てを準備することは不可能です。「完璧な戦略はいつ、どのようにしたら完成しますか?」というコーチからの問いで「自分スタイル」から抜け出すきっかけを掴んだようです。
(2)経営者のリスキリングは、組織全体の「OS更新」である
パソコンやスマートフォンをイメージしてください。いくら最新のアプリケーション(新規事業やDXツール)を導入しようとしても、土台となるOSが古いままでは、動作が重くなったり、最悪の場合はシステムダウンしたりしてしまいます。組織におけるOSとは、まさに「経営者の思考」そのものです。トップの思考がアップデートされなければ、組織全体が最新の環境に適応することは不可能なのです。
(3)DX・生成AI時代に取り残される経営者、進化する経営者
特にテクノロジーの進化は凄まじいものがあります。生成AIを「よくわからない便利なツール」で片付けるのか、それとも「ビジネスの前提を根底から覆すゲームチェンジャー」と捉えて自ら触ってみるのか。この初動の差が、数年後の企業の生死を分けると言っても過言ではありません。
2.経営者は何を学ぶべきか? 成長を加速させる5つの主要領域
「学ぶべきことが多いのはわかっているが、何から手をつければいいのか」という声をよく伺います。経営者が優先的に取り組むべき領域は、大きく分けて以下の5つだと考えられます。
(1)最新テクノロジーの理解(DX・AIなどへの感度)
プログラミングができるようになる必要はありません。しかし、「その技術で何が可能になり、自社のビジネスモデルのどこにインパクトを与えるのか」を直感的に理解できるまでの感度はぜひ体得したいです。
(2)人と組織のマネジメント(心理的安全性を生むリーダーシップ)
かつての「強いリーダーが引っ張る」スタイルから、メンバーの多様性を活かし「心理的安全性」を高めることでイノベーションを誘発するスタイルへの転換が求められています。
「ヒトに興味を持つ」リーダーをぜひ目指したいです。
(3)経営知識の再構築(戦略・財務・マーケティングの最新潮流)
MBAで学ぶような基礎知識も、時代と共に進化しています。例えば、従来の「競合に勝つ戦略」から「共創する戦略」、また「競争しない戦略は?」など、最新理論の習得や発想の転換が必要です。
(4)自己理解(自らの価値観と意思決定スタイルの客観視)
「自分はなぜ、この局面でこの判断を下したのか」。自らのバイアスや価値観の癖を客観的に知ることは、意思決定の質を劇的に向上させます。
(5)社会・歴史・哲学などの「リベラルアーツ」
一見、ビジネスに直結しないように思えるこれらの教養こそが、困難な判断を迫られた際の「引き出し」となったり「判断軸」ともなり得ます。
3.なぜ経営者に「学び」が必要なのか ― 組織の器はトップで決まる
「組織や会社はリーダーの器以上に大きくならない」という言葉があります。この「器」を広げる重要は一つの手段が、学びです。
(1)経営者に「卒業」や「資格」は存在しない
医師や弁護士と違い、経営者には免許も更新試験もありません。だからこそ、自律的に学び続けなければ、その能力は瞬く間に陳腐化してしまいます。
(2)経営者の自己成長の限界が、企業の成長限界になる
トップが「自分はもう十分に知っている」と思った瞬間、その会社の成長は止まります。社員は敏感にトップの停滞を察知し、残念ながら組織から活気が失われてしまうのです。
(3)学び続ける経営者と、停滞する経営者の決定的な差
成長し続ける経営者は、常に「自分はまだ何も知らない」「何かが足りない」という謙虚さ(知的謙遜)や良い意味での危機感を持っています。この姿勢が、周囲からの新しい情報の流入を促し、結果として組織にイノベーションをもたらす好循環を生む可能性が高いです。
4.単なる「勉強」と「経営の学び」の決定的な違い
学生時代の勉強と、経営者の学びは似て非なるものです。そして学ぶというより「体感する」という表現が相応しいかも知れないです。
(1)知識の詰め込みは目的ではない
情報を記憶することに価値はありません。今の時代、情報の収集や検索はコンピューターやAIがやってくれるようになっています。
(2)本質を見抜く「視点・視野・視座」を磨く
経営者の学びの本質は、「見え方」を変えることにあります。
- ・視点:どこを見るか(着眼点)
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・視野:どこまで見るか(範囲)
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・視座:どこから見るか(高さ)
これらを自在にコントロールできる能力を養うことが、経営における重要な学びです。
コーチングセッションでクライアントの視座が変わる場面は少なくないです。ある企業の海外子会社の現法社長は、自社の業績向上に一生懸命。そのために強い態度で臨むこともしばしばで、本社との軋轢も少なくない。そんな様相を見て筆者は、その現法社長へこのような問いをしました。「自社の業績向上を目指すのは現法社長の重要な使命ではありますが、会社全体を俯瞰している本社社長は、現法の位置づけをどのように見ていると思いますか?」現法社長のはっとした表情が印象的でした。
(3)経営者の核となる「コンセプチュアルスキル」とは
個別の事象から本質を抜き出し、抽象化して捉える「概念化能力(コンセプチュアルスキル)」。これこそが、正解のない問いに立ち向かう経営者にとって最強の武器となります。
一見すると関係なさそうな様々な事象から、共通要因や派生的事象を想起する。これこそ経営者ならでは身に着けたいスキルだと思います。
5.最も困難で重要な学び「アンラーニング(学習棄却)」
学びには「足し算」だけでなく「引き算」が必要です。
(1)新しい武器を手に入れる前に、古い武器を捨てる
「アンラーニング」とは、これまでの成功法則や慣習を意図的に手放すことです。これは実は簡単なことではありません。しかし両手が過去の荷物で塞がっていては、新しいチャンスを掴むことはできないことは、想像に難くありません。
(2)「これまでの正解」が通用しない世界への適応
かつての「正解」が、今の「不正解」になる。残酷ではありますが、これが現実です。従って、自らの行動様式や慣れ親しんだ発想をリセットすることで、自らの変容や進化に結びつけたいです。
(3)プライドを横に置き、自らをアップデートする勇気
意外に取り扱いが難しいのが自尊心です。「自分はこの分野に詳しい専門家だ」というプライドが邪魔をして、年下や部下から学ぶことを拒んでいませんか? アンラーニングには、高い自己肯定感と、それ以上に高い「謙虚な勇気」が必要です。
6.経営者は「何を学べて、何を学べないのか」
何でも学べば良いというわけではありません。学べないことを、いかに自らの中に「体系化」し、「腹落ち」させるか、という意識も重要です。
(1)知識やフレームワークは外部から得られる
ファイナンスの理論やマーケティングの手法は、本やセミナー、あるいはコンサルタントから学ぶことができます。これらは技術として習得可能です。
(2)経営の「覚悟」と「責任」は教わることができない
最後の一線を越える「覚悟」や、結果を一身に背負う「責任感」は、誰かに教えてもらえるものではありません。これは自らの内側から湧き上がるものであり、日々の葛藤の中で育まれるものです。
(3)最後は「意思決定の場数」が経営者を育てる
「泳ぎ方」の本を読んでも泳げるようにならないのと同様、経営もまた、荒波の中で意思決定をし続けるという「経験」を通じてのみ、磨かれていく領域があります。体感値や経験に裏打ちされた「感覚」も経営の場面においては非常に大切です。
7.多忙な経営者のための「学びの作法」と習慣術
時間は皆平等に24時間しかありません。効果的・効率的に成長するための「作法」をお伝えします。
(1)経験を抽象化し、他に応用する「メタ認知」の習慣
起きた出来事を単なる「点」で終わらせず、「これは他の場面でも言えることではないか?」と一歩引いて考える、俯瞰する習慣を持ちましょう。これが「メタ認知」です。
(2)現場や専門家、さらには「部下」からも謙虚に学ぶ
「リバース・メンタリング」という言葉があるように、若手社員の方が詳しい領域(SNS、最新カルチャー、テクノロジーなど)については、彼らを師匠として仰ぐ姿勢が、あなたのOSを驚くほど速く更新します。もちろんこの手法は現場や部下に学びを促す、そして視野を広げる機会になる、という副産物も期待できます。
ある社長がセッションの冒頭に「今、実はちょっと生成AIを使ってみたんですよ!」と教えてくれました。筆者が「社長、それは素晴らしいです。」と返答すると、やや間があって「でも自分で少し触ってみてから、後は社員に託しました。本人のため、そして会社のためには、その方が良いかなと思って。」満足げな社長の表情が記憶に残っています。
(3)「教えることは、最大の学び」組織を通じて吸収する仕組み
学んだことをすぐに誰かに話す、あるいは社内研修で経営者自らが講師を務めてみる。アウトプットを前提とすることで、インプットの質は劇的に高まります。
8.現代の教養「リベラルアーツ」が経営判断の質を変える
なぜ今、世界のトップリーダーは哲学や歴史を学ぶのでしょうか。
(1)歴史・哲学・文学から、不変の人間心理を学ぶ
時代が変わっても、人間の本質(恐れ、欲望、希望)は変わりません。古典には、組織運営における人間関係のヒントが詰まっています。
筆者も遅ればせながら最近「リベラルアーツ」をかじり始めました。すると日頃あまり使わない脳みそを使っているような感触で、良い意味で頭に「良い汗」をかくことが出来ています。そして学ぶことで様々な引き出しが、少しずつですが、増えてきているような気がします。
(2)複雑な社会情勢を読み解くための思考訓練
物事を白か黒かで判断せず、グレーのまま受け入れ、その中で最善を尽くす。リベラルアーツは、そうした多角的な「思考のスタミナ」を養ってくれます。
(3)短期的な数字を超えた「大局観」を養う
「そもそも自分たちは、何のためにこの事業をやっているのか」。歴史的な視点を持つことで、そもそもの原点という発想や、目先の利益に惑わされない「100年単位の視座」を持つことが可能になります。
9.【実践】明日から始める「学びのルーティン」
それでは、今日からできる具体的なアクションをご提案します。
(1)部下に「最新トレンドを教えてほしい」と頼んでみる
「最近、若い人の間で何が流行っているの?」という一言から、新しい視界が開けます。
(2)古典や歴史に触れ、思考の射程を伸ばす
月一回、ビジネス書以外の本を一冊手に取ってみてください。歴史小説でも伝統芸能に関する書籍など、意外なところで現在の悩みへの回答が見つかるかも知れません。
(3)1日15分、自分を「客観視」する時間を確保する
ジャーナリング(書き出し)や瞑想、あるいは信頼できるコーチとの対話を通じて、自分の思考が古いOSに縛られていないかをチェックする時間を持つのも有用です。
筆者の経営者クライアントの多くは、コーチングセッションを課題解決というよりは、「立ち止まって自らを振り返る、内省する場」と捉えているようです。周りで起きていることに対して自分はどう感じているのか、そして、社長として自分はどう対応していこうと考えているのか、そしてそれはなぜか、どういう価値観や信念に基づくのか?コーチからの問いに答えながら、クライアント自らが言語化する時間となることが多いです。
10.まとめ ― 学び続ける経営者が、組織の未来を切り拓く
(1)学ばない経営者が招く、組織の硬直化というリスク
トップの思考が止まれば、組織は過去の遺産を食いつぶすだけの存在になります。それは社員の未来、ひいては社会への責任を放棄することになってしまいます。
(2)学びの本質は「知識」ではなく「思考OSのアップデート」
情報を増やすことではなく、情報を受け取る「自分自身という器(OS)」を、より高次なものへ更新し続けること。これこそが経営者に求められる真の学びです。
(3)自らの変化を楽しむ姿勢が、社員を動かす
経営者が楽しそうに新しいことを学び、変化していく姿ほど、社員を勇気づけるものはありません。
皆さまの「学び」は、単なる自己研鑽ではなく、組織を救い、未来を創るための「最高にクリエイティブな仕事」です。私自身、エグゼクティブコーチとして、多くのリーダーが自らの意思でOSを更新し、驚くような変容を遂げる姿を間近で見てきました。
自らのOSを更新し、組織という器を広げる旅を、今日から再開してみませんか?
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