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【経営者のリーダーシップとは?】身に着け方と使い分け方法
経営者やシニアマネジャーとして日々組織を率いる中で、ふと、立ち止まる瞬間はないでしょうか。
- 「自分のリーダーシップは、本当に今の組織に合っているのか」
- 「状況に応じて関わり方を変えるのは、ブレていることにならないのか」
- 「これ以上、どこを成長させればよいのか」
- ・業績は決して悪くない。
- ・大きなトラブルが起きているわけでもない。
それでも心のどこかに、言葉にしきれない違和感が残る。
実はこの感覚こそが、
“リーダーとして次のステージに進むサイン”
であることが少なくありません。
本記事では、「経営者のリーダーシップ」を
- ・理論としてではなく
- ・現場で“使える視点”として
整理していきます。
このブログを読むとわかること
- 1.経営者がリーダーシップについて立ち止まる瞬間
- (1)自分のリーダーシップは「正しい」のか?
- (2)状況や相手によってリーダーシップを切り替えて良いのか?
- (3)リーダーとして「次の成長ステージ」は何か?
- 2.リーダーシップとは
- 3.経営者には、なぜマネジメントではなくリーダーシップが必要なのか
- 4.リーダーシップスタイルとその使い分け
- (1)6つのリーダーシップスタイル
- (2)リーダーシップスタイルのメリット・デメリット
- (3)経営者が実務で使える「使い分けの視点」
- 5.リーダーシップの身に着け方
- 6.リーダーシップがある人の特徴・行動様式
- 7.あなたのリーダーシップスタイルを見つけよう
- 8.まとめ
筆者プロフィール
砂村 義雄
ステッププラス・コーチング&コンサルティング代表、エグゼクティブコーチ
国内外企業での30年の勤務経験を活かし、経営者・管理職の課題解決・目標達成にコーチングで伴走。中小企業診断士・MBA・国際コーチング連盟(ICF)プロフェッショナルコーチ(PCC)
1.経営者がリーダーシップについて立ち止まる瞬間
(1)自分のリーダーシップは「正しい」のか?
多くの経営者は、過去の成功体験によって今の立場に立っています。それ自体は間違いなく強みです。
一方で、組織のフェーズや人材の価値観が変わったとき、その成功体験が「無意識の制約」になることがあります。
- ・指示しているつもりが、過干渉になっている
- ・任せているつもりが、放任になっている
- ・正論を言っているのに、人が動かない
この違和感を持ち始めた時こそ「正しいかどうか」ではなく
「今、機能しているか」という問いに切り替えるタイミングです。
(2)状況や相手によってリーダーシップを切り替えてよいのか?
「首尾一貫していないと、信用されないのでは?」
この不安は、誠実な経営者ほど強く抱きます。
ここで重要なのは、
「一貫すべきものと、変えてよいものを分けて考えること」です。
- ・一貫すべきもの:価値観、判断軸、目指す方向
- ・変えてよいもの:伝え方、関わり方、リーダーシップスタイル
軸が一貫していれば、スタイルの使い分けは、「ブレ」ではなく「成熟」です。
(3)リーダーとして「次の成長ステージ」は何か?
売上でも、役職でもない。次に求められるのは、
「自分がいなくても組織が前に進む状態をつくる力」
プレイヤー型リーダーから、
「他者のリーダーシップを引き出す存在」への移行。
この転換こそ、多くの経営者が直面する次のテーマです。
2.リーダーシップとは
リーダーシップとは、
「人と組織に影響を与え、望ましい方向へ変化を生み出す力」です。
肩書きではなく、性格でもなく、「後天的に磨く」ことのできるスキルです。
重要なのは、
リーダーシップには「唯一の正解」がない、という点です。
3.経営者には、なぜマネジメントではなくリーダーシップが必要なのか
マネジメントは「現在を安定させる力」。一方、リーダーシップは「未来を創る力」。
不確実性の高い時代において、経営者に最も求められるのは
「方向性を示し、人を巻き込む力」です。
管理が行き届いていても、リーダーシップが弱い組織では、
- ・判断が遅れる
- ・部門最適に陥る
- ・人が育たない
という現象が起こりがちです。
4.リーダーシップスタイルとその使い分け
「感情知性(EQ)」の視点から考える
ここまで、「リーダーシップには正解がない」「状況によって使い分けが必要」とお伝えしてきました。では、その「使い分け」は何を拠り所に考えればよいのでしょうか。
その際、経営者・エグゼクティブの現場で非常に参考になるのが、心理学者であり
ジャーナリストのダニエル・ゴールマンが提唱した
「EQ(感情知性)に基づくリーダーシップ理論」です。
ゴールマンは、数多くの組織研究・リーダー研究を通じて、成果を上げ続けるリーダーには共通して「IQや専門性以上に、EQが重要である」と指摘しました。
そしてEQの発揮の仕方として、リーダーシップを「6つのスタイル」に整理しています。
- ダニエル・ゴールマン(2025)「EQリーダーシップ新装版」(日本経済新聞出版)https://bookplus.nikkei.com/atcl/catalog/25/12/10/02372/
- (2026年1月28日)
(1)EQリーダーシップ:6つのリーダーシップスタイル
以下が、ゴールマンが提示した6つの代表的スタイルです。
①ビジョン型(Visionary / Authoritative)
- 「なぜそれをやるのか」を語り、方向性を示すスタイル
- → 組織を未来へ向かわせる力
②コーチ型(Coaching)
- 対話を通じて相手の成長を支援するスタイル
- → 人材育成・次世代リーダー育成に有効
③関係重視型(Affiliative)
- 人間関係や感情のつながりを重視するスタイル
- → 心理的安全性を高める
④民主型(Democratic)
- 意見を広く募り、合意形成を重視するスタイル
- → 納得感と主体性を引き出す
⑤ペースセッター型(Pacesetting)
- 高い基準を示し、自ら率先垂範するスタイル
- → 短期的成果には強い
⑥指示・強制型(Commanding / Coercive)
- 明確な指示と統制で動かすスタイル
- → 危機対応・緊急時に有効
ゴールマンの重要な指摘は、
「優れたリーダーは、これらを状況に応じて使い分けている」
という点にあります。
(2)リーダーシップスタイルのメリット・デメリット
「効く場面」と「使いすぎの副作用」
ここで注意したいのは、どのスタイルにも必ず“副作用”がある、ということです。
例えば、
- ・ペースセッター型は成果を出しますが、
- 使い続けると部下が疲弊し、思考停止を招きやすい
- ・関係重視型は安心感を生みますが、
- 厳しい意思決定を先送りしがちになる
- ・民主型は納得感を高めますが、
- スピードが求められる局面では機能しません
つまり、
リーダー自身に問いかけるべきは「どのスタイルを使うか?」ではなく、
「いつ・なぜ、そして無自覚に使っていないか?」なのです。
多くの経営者は、
- ・過去の成功体験
- ・自分の性格
- ・得意な関わり方
によって、特定のスタイルに偏りがち、です。
(3)経営者が実務で使える「使い分けの視点」
ここまでで、代表的なリーダーシップスタイルとその特徴を整理してきました。
では実際に経営者として日々の現場で、どのような視点で使い分ければよいのか。
ここが最も重要であり、同時に最も悩ましいポイントでもあります。
筆者のクライアントであるエグゼクティブから垣間見える方法は、「スタイルを選ぶ」というより、「状況を見て、意図的に切り替える」というアプローチです。
【視点① 組織のフェーズで使い分ける】
組織の成長段階によって、有効なリーダーシップスタイルは明確に変わります。
- ・創業期・立ち上げ期
- → ビジョン型 × 指示型
- 方向性を示し、スピードを優先する
- ・成長期
- → ペースセッター型 × コーチ型
- 成果を出しつつ、人材育成に着手する
- ・成熟期
- → 民主型 × 関係重視型
- 多様な知見を活かし、組織の自律性を高める
- ・変革期・危機対応
- → ビジョン型 × 指示型
- 「なぜ変わるのか」を語り、迷いを断つ
ここで重要なのは、「昔うまくいったスタイル」に固執しないことです。
組織が変われば、経営者自身のリーダーシップも進化が求められる、という前提に立つ必要があります。
【視点② 相手(メンバー)の成熟度で使い分ける】
同じ組織の中でも、相手によって最適な関わり方は異なります。
- ・経験が浅いメンバー
- → 指示型+コーチ型
- ・自律的に動ける中堅・幹部
- → コーチ型+ビジョン型
- ・専門性が高いプロフェッショナル
- → ビジョン型中心
全員に同じ接し方をすることは「公平」ではありますが、必ずしも「公正」「効果的」とは限りません。
一貫性とは、
「同じ対応をすること」ではなく、
「同じ価値観・判断軸に基づいて対応すること」
である、という認識が重要です。
【視点③ 時間軸(短期/中長期)で使い分ける】
短期成果が求められる局面と、中長期視点が必要な局面では、スタイルは大きく異なります。
- ・短期・即断即決が必要
- → 指示型・ペースセッター型
- ・中長期・人材育成・文化づくり
- → コーチ型・関係重視型
経営者が陥りがちなのは、短期成果を出し続けるスタイルを、無意識に常用してしまうことです。その結果、組織が疲弊し、自律性が育たない、というケースは少なくありません。
【視点④ 自分の「得意・不得意」を自覚する】
ダニエル・ゴールマンが提唱したEQリーダーシップの示唆の一つは、
「優れたリーダーは、複数のスタイルを使える」という点です。
ただし、すべてを完璧に使いこなす必要はありません。
- ・自分が無意識に使いやすいスタイル
- ・意識しないと使えないスタイル
この違いを理解したうえで、「苦手なスタイルを最低限使えるようになる」
ことが、現実的かつ効果的です。
5.リーダーシップの身に着け方
リーダーシップは、センスや性格ではなく、「意識的に開発できるスキルと在り方」です。
【ステップ① 自己認識を深める】
EQリーダーシップの出発点は、常に「自己認識」です。
- ・自分はどんな場面で感情が動くのか
- ・プレッシャー下で、どんな反応をしやすいのか
- ・周囲からは、どう見えているのか
経営者になるほど、率直なフィードバックは得にくくなります。
だからこそ、
- ・360度フィードバック
- ・信頼できる第三者
- ・エグゼクティブコーチ
の存在が重要になります。
【ステップ② 小さく試し、振り返る】
リーダーシップは「理解」ではなく「行動」で身に着きます。
例えば、
- ・会議で一度、結論を言う前に「皆さんはどう思いますか?」と問いかける
- ・部下の報告に、すぐ助言せず「あなたはどう考えている?」と返す
こうした「小さな行動実験」を意識して実施し、
「何が起きたか」「自分はどう感じたか」を振り返ることが重要です。
【ステップ③ 継続的な内省の習慣】
優れた経営者ほど、意識的に立ち止まり、振り返っています。
- ・今日の自分の関わり方は適切だったか
- ・別のスタイルを使う選択肢はなかったか
- ・組織にどんな影響を与えただろうか
この内省の質が、リーダーシップの質を決定づけます。
6.リーダーシップがある人の特徴・行動様式
リーダーシップが強い人には共通点があります。
- ・自分の価値観が明確
- ・未来志向である
- ・感情のコントロールができる
- ・他者の話を深く聴く
- ・決断が早い
- ・失敗を恐れず挑戦する
- ・周囲に安心感を与える
- ・言葉と行動が一致している
皆さんも、周囲の尊敬されるリーダーを思い浮かべると、これらの特徴が当てはまるのではないでしょうか。
7.あなたのリーダーシップスタイルを見つけよう
最後に、読者ご自身が取り組める整理です。
(1)自分への問い
- ・自分が最も自然に使っているスタイルは何か
- ・逆に、避けがちなスタイルは何か
- ・今の組織に「足りていない」リーダーシップは何か
(2)周囲からのフィードバック
- 「どんな時の私が、一番やりやすいですか?」
- 「どんな時に、距離を感じますか?」
この問いは、勇気がいりますが、極めて価値があります。
(3)自分なりの使い分けルールを持つ
完璧なリーダーになる必要はありません。
- ・平時は〇〇型
- ・育成は〇〇型
- ・危機時は〇〇型
という「自分なりの型」を持つことが、実務では最も機能します。
8.まとめ
経営者のリーダーシップとは、
「正解を持つこと」ではありません。
より適切なもの、より機能するものを「問い続ける力」です。
もし今、
「このままで良いのだろうか?」と感じているなら、
それは変化の入口に立っている証拠かもしれません。
立ち止まり、考え、対話する。
そこから、次のリーダーシップが始まります。
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