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【組織風土とは? 組織文化との違いと組織風土改革のために必要な“本当のこと”】
- 「戦略は間違っていないはずなのに、なぜか現場が動かない」
- 「制度は整えた。でも、組織の空気が変わらない」
経営者や管理職の皆さんと対話をしていると、こうした言葉を耳にすることが少なくありません。数字や資料では説明しきれない、けれど確かに“何かが引っかかっている”感覚。
その違和感の正体として、多くの場合、浮かび上がってくるのが「組織風土」です。
本ブログでは、「組織風土とは何か」「なぜ経営課題として重要なのか」、そして「本当に変えるために必要なことは何か」を、筆者の現場経験を踏まえながら整理していきます。
このブログを読むとわかること
- 1.組織風土とは何か?
- (1)組織風土の定義
- (2)組織文化・社風との違い
- (3)なぜ今「組織風土」が経営課題になるのか
- 2.組織風土は“結果”である
- (1)組織風土は作ろうとして作れるものではない
- (2)戦略・制度・評価と組織風土の関係
- (3)「良い風土/悪い風土」が生まれるメカニズム
- 3.組織風土が表れる“具体的なサイン”
- (1)会議・意思決定・失敗対応に表れる風土
- (2)沈黙・忖度・過剰な同調圧力
- (3)離職・疲弊・挑戦回避として現れる兆候
- 4.組織風土の正体は「日常の関わり方」
- (1)組織風土を形づくる3つの要素
- (2)言動・関係性・前提
- (3)なぜ制度だけでは変わらないのか
- 5.経営者・管理職が無意識に与える影響
- (1)トップの一言が空気を決める
- (2)「意図」と「伝わり方」のズレ
- (3)良かれと思っている行動が、風土を硬直させる瞬間
- 6.組織風土を変えるために本当に必要なこと
- (1)変えるべきは“風土”ではなく“関わり方”
- (2)小さな行動変容が空気を変える
- (3)対話・内省・フィードバックの重要性
- 7.まとめ
- 組織風土は「経営者の生き方」がにじみ出たもの
- (1)風土は操作対象ではなく、結果である
- (2)変化はトップ自身の変化から始まる
- (3)組織風土に向き合うことは、経営者自身に向き合うこと
筆者プロフィール
砂村 義雄
- ステッププラス・コーチング&コンサルティング代表、エグゼクティブコーチ
- 国内外企業での30年の勤務経験を活かし、経営者・管理職の課題解決・目標達成にコーチングで伴走。中小企業診断士・MBA・国際コーチング連盟(ICF)プロフェッショナルコーチ(PCC)
1.組織風土とは何か?
(1)組織風土の定義
「組織風土」と聞くと、皆さんはどのようなイメージを思い浮かべるでしょうか。
- 「うちは保守的だ」
- 「挑戦を嫌う空気がある」
- 「表向きは穏やかだが、本音が出てこない」
こうした表現は、どれも組織風土を的確に捉えています。
組織風土とは、
「その組織に身を置いたとき、無意識に感じ取る空気や前提」の集合体です。
- ・会議でどこまで本音を言ってよいのか。
- ・失敗したとき、正直に報告してよいのか。
- ・上司に異論を唱えても評価に影響しないのか。
これらは規程やマニュアルには書かれていません。しかし、確実に存在し、私たちの行動を強く方向づけています。
多くの場合、新しく組織に入った人の方が、この風土を敏感に察知します。「この会社では、こう振る舞うのが無難だ」という感覚を、驚くほど早く身につけていくのです。
(2)組織文化・社風との違い
組織風土は、「組織文化」や「社風」と混同されがちです。ここで整理しておきましょう。
組織文化は、企業の理念や価値観、創業者の思想、歴史の中で培われた“根っこ”の部分です。時間軸が長く、比較的変わりにくい特徴があります。
一方、社風は、「アットホーム」「体育会系」といった、やや感覚的で“外部視点”を含んだ表現です。
それに対して組織風土は、
『日々の意思決定やコミュニケーションの積み重ねによって、その時点で立ち上がっている現在進行形の空気』と言えます。
つまり文化が地層だとすれば、風土はその上を流れる空気です。経営者や管理職の日常の関わり方によって、比較的短期間でも変化し得るのが、この組織風土なのです。
(3)なぜ今「組織風土」が経営課題になるのか
近年、組織風土が経営課題として注目される理由は大きく3つあります。
-
① 変化のスピードが速く、挑戦が求められる時代になった
- 旧来の「指示待ち」「前例踏襲」では競争に勝てません。
-
② 優秀な人材ほど“風土”で会社を選ぶようになった
- 給与や福利厚生よりも、「心理的安全性」「挑戦できる環境」を重視する傾向が強まっています。
-
③ 戦略や制度だけでは成果が出ないことが明らかになってきた
- どれだけ優れた戦略を掲げても、風土がそれを阻害すれば実行されません。
皆さんも、
- 「制度は整えたのに、現場が動かない」
- 「戦略は正しいはずなのに、成果が出ない」
と感じた経験はないでしょうか。
その背景には、多くの場合「組織風土」が横たわっています。
2.組織風土は“結果”である
(1)組織風土は作ろうとして作れるものではない
「風土改革をしよう」
経営会議で、こうした言葉が出ることは少なくありません。しかし、ここに大きな誤解があります。
組織風土は、意図的に設計して作る“もの”ではありません。
むしろ、
- ・日々どんな意思決定がされているか
- ・誰の声が尊重されているか
- ・何が評価され、何が黙殺されているか
こうした積み重ねの『結果として立ち現れるもの』です。
(2)戦略・制度・評価と組織風土の関係
組織風土は、以下の3つの要素と密接に関係しています。
- ・戦略:何を成し遂げるのか
- ・制度:どのように運営するのか
- ・評価:何を良しとするのか
特に評価制度は風土に強い影響を与えます。
例えば、
- ・「挑戦」を評価すると言いながら、実際には「失敗しないこと」が評価される
- ・「協働」を重視すると言いながら、個人の成果だけで評価される
- ・「スピード」を求めながら、慎重さを評価する
こうした矛盾があると、社員は「本当に求められている行動」を敏感に察知し、風土はその方向に固まっていきます。
(3)「良い風土/悪い風土」が生まれるメカニズム
組織風土の形成メカニズムは、実はとてもシンプルです。
ある行動を取った結果、
- ・認められた
- ・評価された
- ・安心できた
この経験があれば、その行動は繰り返されます。
逆に、
- ・叱責された
- ・不利益を被った
- ・居心地が悪くなった
こうした経験があれば、人はその行動を避けます。
この積み重ねが、組織全体の“当たり前”を形づくっていくのです。
3.組織風土が表れる“具体的なサイン”
組織風土は目に見えませんが、必ず現場の「現象」として表れます。皆さんの組織では、以下のようなサインが出ていないでしょうか。
(1)会議・意思決定・失敗対応に表れる風土
会議で発言するのは特定の人だけ。決定事項に対して、会議が終わった後に廊下で反対意見が出る。あるいは、失敗が起きた時に「誰がやったのか(犯人探し)」が優先され、「なぜ起きたのか」という本質的な議論がなされない。これらは、心理的安全性が低く、防衛的な風土の典型的なサインです。
(2)沈黙・忖度・過剰な同調圧力
「こんなことを言っても無駄だ」「波風を立てないのが一番だ」という空気が支配的になると、組織は沈黙に包まれます。上司の顔色を伺う「忖度」が常態化し、皆が同じ意見を持つことを強いる同調圧力が強まると、組織の自浄作用は失われます。
(3)離職・疲弊・挑戦回避として現れる兆候
数字上の業績は悪くないのに、なぜか若手の離職が止まらない。あるいは、新しいプロジェクトを公募しても誰も手を挙げない。これらは、現場が「現状維持が最も合理的である」と判断してしまっている、組織の疲弊の表れです。
4.組織風土の正体は「日常の関わり方」
(1)組織風土を形づくる3つの要素
風土を理解するためには、「関係性」に注目することが重要です。筆者の現場経験では風土を形づくるものに3つの要素があります。
-
① 言動:日々のコミュニケーションや意思表明の仕方
-
② 関係性:上司部下やメンバー間の信頼・心理的安全性の度合い
-
③ 前提:人や仕事に対する“無意識の捉え方”
例えば上司が、「部下は指示待ちだ」と決めつける前提で接すれば、その前提どおりの行動が返ってきます。風土は、こうした前提と関わり方の『相互作用』によって育まれます。
(2)言動・関係性・前提
上司が「信頼して任せる」という言葉を発しても、実際には細かく管理していれば、部下は「信用されていない」と感じます。つまり、言葉よりも関わり方が風土を決めるのです。
関係性にズレがある場合、どんなスローガンも形骸化します。
皆さんも、“理念は立派だが、現場の空気は違う”と感じた経験があるのではないでしょうか。それは、この『言葉と行動の不一致』から生まれる風土の歪みです。
(3)なぜ制度だけでは変わらないのか
制度やルールは必要条件であって十分条件ではありません。
たとえば「1on1ミーティングを導入した」としても、上司が一方的に話す場であれば本来の目的が達成されません。制度は新しい関わり方の場を提供するもの。しかし、本当に空気を変えるのは、その場での『在り方』なのです。
5.経営者・管理職が無意識に与える影響
組織風土に最も強い影響を与えるのは、他ならぬ経営者や管理職の皆さんの「無意識の振る舞い」です。
(1)トップの一言が空気を決める
エグゼクティブの皆さんが放つ一言には、皆さんが想像している以上の重みがあります。何気なく発した「あれ、どうなった?」という確認が、部下には「監視されている」「詰められている」と受け取られることも少なくありません。
(2)「意図」と「伝わり方」のズレ
リーダーは“良かれと思って”アドバイスをしているつもりでも、受け手は「自分のやり方を否定された」と感じることがあります。この「意図」と「影響」のズレを認識していないことが、組織の風通しを悪くする原因となります。
(3)良かれと思っている行動が、風土を硬直させる瞬間
例えば、責任感の強いリーダーほど、自ら正解を提示してしまいがちです。しかし、これが繰り返されると、現場は「考えない組織」になっていきます。「最後は社長が決めてくれる」という依存心が、主体性を奪う風土を作ってしまうのです。
6.組織風土を変えるために本当に必要なこと
「組織風土を変えよう」とスローガンを掲げる代わりに、以下のステップでのアプローチが必須です。
(1)変えるべきは“風土”ではなく「関わり方」
風土という大きな影を追うのではなく、その影を作り出している「日常の関わり方(コミュニケーション)」に焦点を当てます。挨拶の仕方、会議での相槌、メールの文面。こうした小さな接触の質を変えることが、風土変革の第一歩です。
(2)小さな行動変容が空気を変える
いきなり全社を変える必要はありません。まずはリーダーである皆さんが『相手の話を最後まで否定せずに聴く』といった、小さな行動変容を1ヶ月継続してみてください。その変化を周囲が感じ取ったとき、組織の空気は確実に変わり始めます。
(3)対話・内省・フィードバックの重要性
自らの言動が周囲にどのような影響を与えているか。これを知るためには、自分を客観視する「内省」と、周囲からの「フィードバック」が不可欠です。
筆者が提供しているエグゼクティブコーチングの場は、将にこの「鏡」としての役割を果たします。自分自身の思考の癖に気づき、対話を通じて新しい関わり方を試行錯誤する。このリーダー自身の変容こそが、組織変革の最短ルートなのです。
7.まとめ:組織風土は「経営者の生き方」がにじみ出たもの
最後に、組織風土の本質についてお伝えします。
(1)風土は操作対象ではなく、結果である
風土は、コントロールしようとすればするほど逃げていきます。それは、操作するものではなく、日々の真摯な関わりの後に、「自然と醸成される結果」なのです。
(2)変化はトップ自身の変化から始まる
組織はトップの器以上には大きくなりません。そして、組織の風土はトップの価値観や恐れ、願望を映し出す鏡です。組織を変えたいと願うなら、まずリーダー自身が変わる勇気を持つことです。
(3)組織風土に向き合うことは、経営者自身に向き合うこと
組織風土の問題と向き合うことは、非常にエネルギーを必要とします。なぜなら、それは自分自身の「在り方」を問われることだからです。しかし、そこから逃げずに自身の言動をアップデートし続ける経営者の姿こそが、社員の心を動かし、活気ある風土を作り上げる唯一の力となります。
皆さんの組織の「空気」は、今日から、あなたの一言から変わり始めます。
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