Blog エグゼクティブ・コーチング
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【資格は必要?】エグゼクティブコーチ資格の取得方法、取得によるメリット・デメリット、キャリアパスなどを徹底解説
近年、「エグゼクティブコーチ」という言葉を耳にする機会が増えたと感じる方も多いのではないでしょうか。企業の経営者や次世代のリーダー、管理職といったエグゼクティブ層を対象に、その能力を最大限に引き出し、組織の成長を促す専門家として、エグゼクティブコーチの役割はますます重要になっています。
このブログでは、エグゼクティブコーチングの概要から、資格取得の方法、そしてそのキャリアパスまで、皆さんの知りたい情報を網羅的にご紹介します。ビジネスパーソンとしてキャリアアップを目指している方、あるいはコーチングの世界に興味をお持ちの方にとって、新たな一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。
このブログを読むとわかること
1.エグゼクティブコーチングとは
2.エグゼクティブコーチング資格について
3.資格がない場合はどうなるのか?
4.資格取得のメリットとデメリット
5.まとめ
筆者プロフィール
砂村 義雄
ステッププラス・コーチング&コンサルティング代表、エグゼクティブコーチ
国内外企業での30年の勤務経験を活かし、経営者・管理職の課題解決・目標達成にコーチングで伴走。中小企業診断士・MBA・国際コーチング連盟(ICF)プロフェッショナルコーチ(PCC)
1.エグゼクティブコーチングとは
(1)その特長
経営者やトップマネジメント層、部門長などのリーダーを対象にした「エグゼクティブコーチング」は、意思決定力やリーダーシップを最大化し、組織全体のパフォーマンス向上を目指す専門的な支援手法です。経営の現場に直結した非常に実践的な支援であり、通常は「1対1」で、「半年から1年」という比較的長い期間にわたり、課題発見・目標設定・実践までを伴走します。
またエグゼクティブコーチングが経営層個人だけでなく、その変化が組織全体に派生していくことを見据えている点も特徴的です。たとえば「経営ビジョンを描き、それを組織に浸透させる」「意思決定の質を上げる」などといった企業や組織全体に関わるテーマを扱うことが多いです。
・ 経営者・幹部のリーダーシップ強化
・ 重要な経営課題に対する行動変革・意思決定サポート
・ 1対1による伴走支援で、期間は比較的長期(6ヶ月~1年)に渡る
(2)他のコーチングとの違い
「ビジネスコーチング」や「ライフコーチング」との違いは、対象とする課題のレベルとインパクトの範囲です。エグゼクティブコーチングは「個人」の成長支援だけでなく、「組織の価値創造」「経営の成否」に直結するテーマを扱います。
・ 経営者層や幹部層への特化
・ 経営戦略や組織変革と直結
・ 社内外のステークホルダーに与える影響が大きい
このような違いがエグゼクティブコーチに、高い専門性と経験値を求める理由です。
2.エグゼクティブコーチング資格について
(1)コーチング資格の種類(海外・国内)
皆さんも「どの資格を取ればよいのか」と迷われることがあるかもしれません。コーチング資格には、国内外で様々な種類がありますが、信頼性と国際的な認知度を考慮すると、以下の資格が代表的です。
【国際資格(海外)】
ICF(国際コーチング連盟)
・ACC(Associate Certified Coach、初級レベルの認定資格)
・PCC(Professional Certified Coach、中級レベルの認定資格)
・MCC(Master Certified Coach、上級レベルの認定資格)
EMCC(欧州メンター・コーチ協会)
・FoundationからMaster Practitionerまで4段階の認定資格
Co-Active Training Institute(CTI)
・CPCC(Certified Professional Co-Active Coach)
【国内資格】
・一般社団法人日本コーチ連盟(認定コーチ資格)
・一般財団法人生涯学習開発財団(認定コーチ・認定プロフェッショナルコーチ・認定マスターコーチ資格)
・一般財団法人日本エグゼクティブコーチ協会(JEA認定エグゼクティブコーチ資格)
・民間スクールによる認定資格
国際資格はグローバルな信頼性が高く、企業やクライアントからの評価も高い傾向があります。一方、国内資格は比較的取得しやすく、初学者にとっての入り口として有効です。
(2)エグゼクティブコーチ資格取得のステップや方法、取得費用・期間・難易度
資格取得には、一定のステップと準備が必要です。以下に代表的なICF(国際コーチング連盟)のACC資格取得の基本的な流れを示します。
【ステップ】
- 1. コーチングスクールでの基礎学習(60時間以上)
- 2. コーチングセッションの実践経験(100時間以上)
- 3. メンターコーチングの受講(10時間以上)
- 4. コーチングセッション録音の提出と評価
- 5. 筆記試験(ICFの倫理・コンピテンシーに関する内容)
【取得費用・準備期間・難易度】
・取得費用:コーチングスクールでの基礎学習は、提供するスクール・団体やプログラム内容によって異なりますが、数十万円から100万円以上が一般的です。これに加えて、資格申請料や更新費用、メンターコーチングの費用などがかかります。
・準備期間:ICFの資格取得には、プログラムの受講から実務経験の積み重ねまで、ACCで数ヶ月~1年程度、PCCでは数年を要するのが一般的です。
・難易度:ICF資格は、単なる知識の習得だけでなく、実際のコーチングスキルや経験が問われるため、難易度は高いと言えます。特にPCC以上では、より高度なコーチングスキルと多くの実績が求められます。
筆者の経験では、ACC取得までの費用は受検料も含めて概ね80万円くらい、準備期間は2年から3年間くらいです。コーチングは理論に加えて実践が重要なので、コーチングスキルの習得と向上に練習が欠かせません。
(3)エグゼクティブコーチ資格取得のために必要なコンピテンシー
資格取得には、単なる知識だけでなく、以下のようなコーチとしての資質、姿勢や心掛け、体現力などが求められます。
・傾聴力:相手の言葉の奥にある意図や感情を汲み取る力
・質問力:思考を深め、気づきを促す問いかけ
・自己認識力:自分自身の価値観や感情を理解する力
・倫理観:守秘義務や境界線を守るプロ意識
・ビジネス理解力:経営課題や組織構造への理解
なおICFでは、コーチとして不可欠な能力を「ICFコア・コンピテンシー」として定めています。このコンピテンシーは一朝一夕で身につくものではなく、日々の実践と振り返りを通じて、徐々に磨かれていくものです。
3.資格がない場合はどうなるのか?
コーチングは医師や弁護士のような業務独占資格ではありません。つまり資格が無くても「エグゼクティブコーチング」を提供することは可能です。
しかし、資格がないことにはいくつかの課題があります。
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(1)信頼性の欠如
クライアントは、自身の重要な課題をコーチに託すことになります。その際、客観的な基準となるのが資格や実績です。資格がない場合、クライアントはコーチのスキルや知識を判断する材料に乏しく、不信感を招く可能性があります。
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(2)体系的な学習の不足
独学でコーチングを学ぶこともできますが、体系的なカリキュラムを通じてプロから学ぶ機会が失われます。コーチングの基礎から応用まで、網羅的にスキルを習得することは容易ではありません。
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(3)プロとしてのネットワークの欠如
多くの資格認定プログラムでは、同じ志を持つ仲間との出会いや、現役コーチとの交流の機会が提供されます。資格がない場合、こうした貴重なネットワークを築く機会を逃すことになります。
特にエグゼクティブ層を対象とする場合、クライアントは高い専門性と信頼性を求めます。資格はその証明であり、安心して対話を進めるための土台となります。
筆者の経験では、外資系企業が社外コーチを探す際には、管理職経験やコーチング経験に加えて、国際資格を有することを要件することがあります。
4.資格取得のメリットとデメリット
(1)資格取得のメリット:将来性とキャリアパス
資格取得には多くのメリットがあります。特に以下の3点は、ビジネスパーソンとしてのキャリアに大きな影響を与えるでしょう。
①市場価値の向上
皆さんも、これまでのビジネス経験を「もっと人の成長に活かしたい」と感じたことはないでしょうか。エグゼクティブコーチ資格を取得することで、これまで培った知見が新たな価値として再定義されます。
・経営者との対話力が高まる
・組織開発や人材育成の専門家として認知される
・独立・副業としての可能性が広がる
②社会貢献とやりがい
コーチングは、単なるスキルではなく「人の可能性を信じる姿勢」に基づきます。クライアントが自らの力で課題を乗り越える姿を見守ることは、何物にも代えがたい喜びです。
筆者の経験でも、コーチの関わりによってクライアントである経営者が気付き、自ら行動を起こすことで会社や組織が動き出す様を何度も目の当たりにしています。
・組織の変革に寄与できる
・若手リーダーの育成に貢献できる
・自分自身の成長にもつながる
③グローバル対応力の強化
国際資格を取得することで、海外クライアントやグローバル企業との仕事も可能になります。多様性を尊重し、異文化理解を深める力が養われます。
・英語でのコーチング提供が可能に
・海外のコーチネットワークとの連携
・グローバル人材育成への貢献
(2)資格取得のデメリット:投資効果
もちろん、資格取得には一定の投資が伴います。皆さんも「本当にその価値があるのか」と疑問を持たれるかもしれません。以下に、考慮すべきデメリットを整理します。
①スキル習得の時間とコスト
資格取得には、時間的・金銭的な負担が発生します。特に国際資格は、数十万円〜百万円以上の費用がかかることもあります。また、学習や実践に割く時間も必要です。
・忙しいビジネスパーソンにとっては、時間確保が課題
・費用対効果を見極める必要がある
・継続的な学習が求められる
②万民に機能するものではない
コーチングは、すべての人に同じように効果があるわけではありません。クライアントとの相性や、組織文化との適合性によって、成果が左右されることもあります。
・クライアントの準備度によって効果が変わる
・組織の風土によっては受け入れられにくい場合も
・コーチ自身のスタイルが合わないこともある
③即効性は乏しく、効果の創出に時間を要す
コーチングは「魔法の杖」ではありません。じっくりと対話を重ね、クライアント自身の気づきと行動変容を促すプロセスです。そのため、成果が見えるまでに時間がかかることもあります。
・短期的な成果を求める組織には不向きな場合も
・継続的な関係性構築が必要
・成果の可視化が難しいケースもある
5.まとめ:エグゼクティブコーチ資格は「未来を切り開くパスポート」
エグゼクティブコーチングは、経営者やリーダーの変革を通じて、組織と社会に大きなインパクトを与える活動です。そのためには高い専門性が求められ、資格取得はその証明となります。
・資格は必須ではないが、信頼の大前提となりつつある
・時間とコストの投資が必要だが、それ以上に大きなやりがいと社会的意義がある
・キャリアパスとして、経営経験×資格が最も強力な組み合わせになる
皆さんも「自分のこれまでのキャリアをどう活かせるか?」という視点で、エグゼクティブコーチ資格を検討してみてはいかがでしょうか。
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